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【中国D36】 中国日系企業における「営業生産性」を向上させる戦略2024.08.15
今回は、マッキンゼー社が2021年に公開したレポート
を参考にしつつ「中国市場に適した営業生産性向上」
の戦略についてお話する。
1. 日系企業は「営業生産性」が低いことで知られている
①中国市場におけるBtoB企業の競争は、激化しており、
「営業生産性の向上」が企業の成長と成功に不可欠である。
②マッキンゼーが2021年に公開したレポート「日本の営業生産
性は何故低いのか?」によると、日本の営業ROIは、ほぼ全業種
で、グローバル水準を下回っていることが指摘されている。
営業ROIとは、営業活動にかかるコスト(人件費、交通費などの経費など)に対し、
どれだけのリターン(粗利または売上高総利益率)を得られるかを示す指標のこと。
これは、通常の投資におけるROIと同様の考え方で、
営業コストを投資、粗利をリターンと見なして計算される。
2. マッキンゼーレポートから見る日系企業の営業生産性の現状
レポートでは、日系企業の営業ROIが低い理由として、
以下の7つの根本課題が挙げられている。
①組織全体の調和と協調を志向する「不明瞭な責任分担」
日系企業は組織全体の調和を重視するため、
個々の営業担当者の責任が曖昧になりがちである。
②「お客様第一主義」文化に起因した非効率性
顧客の要望に過度に応じることで、無駄なコストが発生しやすい。
③取引関係の固定化による「新規成長領域へのリソース振り向け不足」
既存顧客との関係を重視しすぎて、
新規顧客開拓が疎かになりがちである。
④前線営業マンが「直接の顧客対応以外に時間をかけ過ぎる」
営業担当者が商談準備や、内部業務に多くの時間を割いて
しまい、実際の顧客対応に十分な時間を割けていない。
⑤ITシステムの「過剰なカスタマイズ」と「デジタル化の遅れ」
ITシステムのカスタマイズが過剰で、
デジタル化が進んでいないため、効率が低下している。
⑥「営業経費削減の相対評価」による負のインセンティブ構造
他社との比較を避ける傾向があり、
営業経費削減やインセンティブ構造化が進まないことが多い。
⑦子会社・海外拠点のガバナンス不足による「経費削減の遅れ」
子会社や海外拠点の管理が不十分で、経費削減が遅れている。
3. マッキンゼーレポートが大きく指摘する主な点
マッキンゼーのレポートによると、ほぼ全業種で、
グローバル水準を下回る日系企業の営業生産性は、
特に以下の点が大きく指摘されている。
【大きな指摘❶】営業プロセスの非効率性
営業活動が標準化されておらず、個々の営業担当者が
「独自の方法で業務を行っている」点が挙げられる。
↓
このような状況では、営業活動の効果を最大化すること
が難しく、結果として生産性が低下する。
例えば、ある営業担当者が成功した方法を他の担当者が
共有できないため、全体のパフォーマンスが向上しない。
【大きな指摘❷】顧客情報のデータ管理の不十分さ
顧客情報のデータ管理が不十分で、以下点も問題である。
「情報の共有がスムーズに行われていない」
例えば、顧客のニーズや過去の取引履歴が適切に
管理されていない場合、営業担当者は、効果的な
アプローチを行うことができない。
また、情報が部門間で共有されていないため、
「顧客対応が一貫性を欠くこと」がある。
【大きな指摘❸】教育・研修の不足
営業担当者のスキルアップを図るための
「教育・研修が不足している」点が挙げられる。
多くの企業では、営業担当者が、自己流で業務を行って
おり、体系的なスキルアップの機会が提供されていない。
↓
このような状況では、営業担当者の能力が均一化されず、
個々のパフォーマンスに大きな差が生じる。
【大きな指摘❹】ITシステムの遅れ
営業活動のデジタル化と、シンプルなITシステムの導入が重要。
多くの企業では「ITシステムの過剰なカスタマイズ」
が行われており、結果としてITシステムが複雑化し、
使いにくくなっている。
↓
これでは、営業担当者が、ITシステムを効果的に活用できず、
生産性が低下する原因となる。
4. 中国市場における営業生産性向上のためのアプローチ
中国市場の日系企業においても、上記に指摘された課題
は、共通して見られることが多い。
以下に、中国日系企業が営業生産性を向上させるための
アプローチを提案する。
【生産性提案❶】営業活動の標準化を図ることが重要
①営業担当者が「それぞれ異なる方法で業務を行う」
と、効率が低下し、成果がばらつく原因となる。
営業担当者全員が、同じプロセスを踏むことで、
営業効率を高めることができる。
②具体的な方法としては、成功事例を元にした
「ベストプラクティスを策定」し、営業担当者全員に
共有することが挙げられる。
例えば、ある企業では、トップ営業担当者の成功事例
を分析し、その手法を全員に共有することで、全体の
営業成績を向上させた。
【生産性提案❷】CRMシステムの導入
①CRM(顧客関係管理)システムを導入することで、
顧客情報の一元管理と情報共有を促進することができる。
顧客情報が分散していると、営業担当者が必要な情報を
迅速に取得できず「効果的なアプローチが難しくなる」。
②CRMシステムの導入により、顧客情報を一元管理し、
リアルタイムで情報を共有することが可能になる。
これにより、営業担当者は顧客のニーズを正確に把握し、
適切な提案を行うことができるようになる。
例えば、ある企業では、CRMシステムを導入した結果、
顧客対応のスピードと質が向上し、成約率が大幅に上昇した。
③CRMシステムは、顧客の購買履歴や、問い合わせ履歴を詳細
に記録するため、顧客の嗜好や傾向を分析することができる。
これにより、営業担当者は顧客ごとにカスタマイズされた提案
を行うことができ、顧客満足度を向上させることができる。
【生産性提案❸】定期的な教育・研修の実施
①営業担当者のスキルアップを図るためには、
定期的な教育・研修が必要である。
多くの企業では、営業担当者が、自己流で業務を
行っているため、スキルの均一化が図られていない。
↓
これにより、営業成績にばらつきが生じ、
生産性が低下する原因となる。
②具体的な方法としては、営業スキルの基礎から応用まで
をカバーする研修プログラムを導入することが挙げられる。
例えば、以下のような幅広い分野での研修や、
社内トレーニングを実施することが重要である。
【研修ⓐ】営業トークの技術
効果的なコミュニケーションスキルを身につけるためのトレーニング
【研修ⓑ】顧客対応の方法
顧客のニーズを理解し、適切に対応するためのスキル
【研修ⓒ】プレゼンテーションスキル
魅力的なプレゼンテーションを行うための技術
③新人営業担当者向けの育成プログラムの整備も重要である。
新人営業担当者が、早期に即戦力として、
活躍できるような育成プログラムの整備が必要である。
多くの企業では、新人営業担当者が、現場での経験を通じて
学ぶOJT(On-the-Job Training)という方法が行われている。
↓
しかし、これでは効率的な育成が難しく、
早期の即戦力としての活躍が期待できない。
④この問題を解決するためには、
体系的な育成プログラムの整備が必要になる。
具体的には、以下が考えられる。
・入社後すぐに実施される基礎研修
・メンター制度の導入
メンター制度では、経験豊富な営業担当者が、新人を
サポートし、実践的なスキルを身につける手助けをする。
↓
これにより、新人営業担当者は、短期間で必要なスキル
を習得し、現場でのパフォーマンスが向上する。
【生産性提案❹】シンプルなITシステムの導入とホームページの進化
①営業活動のデジタル化を推進することが重要である。
多くの企業では、ITシステムの過剰なカスタマイズが行われて
おり、結果としてシステムが複雑化し、使いにくくなっている。
↓
改善策として「シンプルで使いやすいシステム」
を導入することが挙げられる。
例えば、クラウドベースのCRMシステムを導入することで、
営業担当者がどこからでもアクセスでき、リアルタイムで
情報を共有することが可能になる。
また、「システムのカスタマイズを最小限に」抑え、
標準機能を最大限に活用することで、システムの維持管理
コストを削減し、使いやすさを向上させることができる。
②別の改善策として自社ホームページの進化が挙げられる。
自社ホームページを「カタログサイト」から脱却し、
顧客にとって有益な情報を提供する「コンテンツサイト」
へと進化させるホームページリニューアルが求められる。
多くの企業では、製品カタログのような商品情報を掲載する
だけの「カタログサイト」になっているため、営業担当者に
活用されておらず、顧客にとっての価値が提供されていない。
↓
具体的な方法としては、ブログ記事や、ホワイトペーパー、
ケーススタディなどのコンテンツを充実させること。
例えば、以下を定期的に発信することで、顧客にとって、
有益な情報源となり、信頼性を高めることができる。
・業界の最新トレンド
・技術情報などのお役立ち情報
・成功事例 など
コンテンツSEOを強化し、検索エンジンでの上位表示を目指す
ことで、より多くの潜在顧客にリーチすることが可能になる。
コンテンツSEOとは、SEO(検索エンジン最適化)対策の一つ。
検索エンジンの性能が向上した現在では、検索ユーザーの役に立つ情報(コンテ
ンツ)を継続的に追加することでアクセス数を向上させる「コンテンツSEO」が、
Web集客の主流になっている。
5. まとめ
以下のような改善策を選択することにより、中国日系企業
の営業生産性を向上させることができます。
・営業活動の標準化
・CRMシステムの導入
・定期的な教育・研修の実施
・シンプルなITシステムの導入
・自社ホームページの進化
(参考)ホームページが古く見栄えが悪いのに放置している日系企業の理由
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